金色の双眼鏡と悪食のメルモ
「そんなに冷たい場所に寝転がっていたら風邪をひくよ」
―女の身体よりも、男の身体よりも、ここはずっと暖かいさ
「怖いのかい」
―まさか
「ずっとここにいるつもりかい」
―出来ればそうしたいね
「あの話は、もうしないのかい」
―虚構に倒錯していたって虚しくなるだけさ
「彼女の声は聞きたくないかい」
―あいにく手段がないんだ
「見栄を張るなよ」
―もっと素直さがあればね
「かわいくないな」
―自分でもそう思う
「そもそも君は老けすぎているよ」
―大人になるのを急ぎすぎると、子供の部分は成長しきれないまま疲弊していくものなのさ
「つまり僕は邪魔者だということだね」
―そろそろ一人になりたいんだ
「眠るのかい」
―ああ
「おやすみ」
―(行かないで)